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今ではすっかりおなじみのゴム風船ですが、皆様はゴム風船がいつ生まれたのかご存じですか?
風船自体は、形こそ違え何世紀も前から親しまれてきました。古くは動物の腸や膀胱をふくらましたとの記録もありますが、現在のゴム風船のイメージとはほど遠いもの。やはり天然ゴムが市場に出回るまで、その誕生を待たなければなりませんでした。日本では1857年、大阪で英国人がふくらまして売ったという記事があります。明治の終わり頃には国産化されたようですが、その頃のゴム風船は自分で息を吹き込んでふくらませるやわらかいものではなかったようです。これは原料である天然ゴムの処理方法が異なっていたのが原因。現在のゴム風船は、水分を多く含んだ状態(ラテックス)で使用されています。
いま私たちが手にしているような風船が誕生したのは、約60年ほど前。米国のある科学者が、ラテックスを原料にゴム管を試作している時、気まぐれにボール紙を猫の形に切り抜いてラテックスにつけ込んでみました。それが乾いた時にできあがったのが、ちゃんと耳のついたキャットバルーン!これをたくさん作って、ボストンの愛国記念日に売ったという話が残っています。 |
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ゴム風船はゴムの木から産出する乳状の樹液でつくられています。ゴムの木は南アメリカの熱帯雨林が原産で、現在では熱帯雨林の多くの国々で育成されています。
ゴムの木の樹皮につけられた切り口からにじみ出てくる樹液を集めたものが、「天然ゴム=ラテックス」です。
ラテックスは日光や水によって分解される100%自然の原料。分解作用は空気にふれたとたんに始まります。
まず酸化により変色し、太陽光線さらされると分解が始まりますが、自然界の微生物は暗闇の中でも天然ゴムを分解します。
研究によると、同じ条件下にある場合、ラテックス製の風船は落ち葉とほぼ同じ速度で分解するという結果が出ています。
原料が樹液ですから当然なわけです。
また、ゴム風船の原料であるラテックスは樹皮から直接採取するため、ゴムの木を伐採することはありません。つまり、ゴム風船や手術用手袋などの製品がより多く使われれば、それだけゴムの木の経済的価値が上がり、むやみに伐採されることも少なくなるのです。
土から生まれて、土に還るゴム風船。プラスチックや金属、ガラス製品などに比べ、ラテックス製品は人間が生みだした製品の中でも希な
自然環境にやさしい製品なのです。 |
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風船飛ばしはもちろん、ついうっかり飛ばしてしまったゴム風船がどうなるか知っていますか?
まず、こうしたゴム風船のほとんどは上空8キロほどまで上昇していきます。外気が摂氏零下40度のの世界。ゴムは硬化し、気圧の低下で7.3倍に膨張します。ゴム風船ははるか上空で凍結し、膨張に耐え切れず粉々に破裂して拡散しながら地上に落ちてくるということがわかっています。
私たちが滅多にゴム風船が落ちているところを見たことがないのは、こういう理由だったのです。
また、ガスが漏れそのままの形で落ちて来た場合でも、自然界で生物分解して落ち葉が朽ちるのと同程度の速さで消滅します。
実際、世界各地で行われているビーチクリーンナップ運動(海辺での清掃運動)の報告でも、回収されるゴミのワーストグループにゴム風船の名が挙がったという例はありません。
『微生物による天然ゴム廃棄物処理』平成2年、10/23日本農芸化学会雑誌刊によると、土壌より分離したナカーティア属の放線菌835Aにより、厚さ0.1ミリの天然ゴム製手袋は最も容易に分解され、ほぼ3週間で完全に分解されたとの報告がなされています。
風船の害によって死んでいく海洋性動物についてはこれまで多くの話題がとりあげられてきましたが、これらは事実なのでしょうか?
バルーン業界関係者と報告者による広範な調査の結果、こうした事例が事実として確認されたことはこれまでに1件もありません。
米国魚類・野性動物機関のキャシー・ベック氏が8年の間に死んだ439頭のセイウチの調査を行った結果わかったことは、死亡したどのセイウチの体内からもゴム風船は1個も見つからなかったという事実です。
また、北海道大学水産学部による父島沿岸の漂流物の研究報告をした荻教授は、「過去500点以上の外洋漂流物の中にゴム風船は認められませんでした。
少なくとも、日本の報告例には海面に浮いた状態のゴム風船は一つもない。また魚網にかかり事故死した3,000〜4,000羽の水鳥の胃からもゴム風船は認められませんでしたし、日本獣医大学での標本データにもゴム風船による死亡例はありません」と話しています。 |
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大空にとんでいくゴム風船。結婚式などでよく目にするバルーンリリース(風船飛ばし)は華やかで胸ときめく楽しい光景です。
ところが、カラフルで象徴的なため、ゴム風船を環境汚染のシンボルと思い込んでしまう方も多いようです。
そんな誤解や間違ったイメージが、多くの子供たちから夢のあるバルーンを遠ざけるとしたら、それはとても悲しいことです。
1994年3月に、先の環境庁長官は次のようにコメントしています。
「環境庁としては、今後ともバルーンリリースを制限する意図はなく、法律で規制することはまったく考えていない。」
1988年10月20日、米国ワシントン州シアトル市の連邦地方裁判所では「天然ゴムから作った風船が自然環境を害する原因になるとは考えられない」とする判決が出ています。
私たちも地球人として環境を大切に思っています。だからこそ皆さん一人ひとりに、もっと正しくゴム風船のことを知っていただきたいのです。
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